体幹筋量と腰痛が関連することを世界で初めて明らかに 国際腰椎学会(ISSLS)の優秀論文賞を受賞
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概要
腾博会国际娱乐_腾博会游戏大厅-【官方授权牌照】大学院医学研究科 整形外科学の堀 悠介(ほり ゆうすけ)大学院生、星野 雅俊(ほしの まさとし)講師、中村 博亮(なかむら ひろあき)教授らの研究グループは、大規模なデータを用いて世界で初めて体幹筋量の臨床的意義を明らかにし、体幹筋量が腰痛に関連することを示しました。本研究成果は、国際腰椎学会「The International Society for the Study of the Lumbar Spine(ISSLS)」の優秀論文賞(ISSLS PRIZE IN CLINICAL SCIENCE 2019)を受賞し、2019年2月6日に国際学術誌『European Spine Journal』のオンライン版に掲載されました。
研究の背景
現在、日本の高齢化率は世界一とされており、今後も上昇することが予想されています。超高齢社会を迎えた日本にとって、健康寿命の延伸は喫緊の課題であり、運動器疾患の克服は重要とされています。
腰痛は日常生活を障害する主な病因の一つであり、日本における腰痛生涯有病率は83%と報告されています。高齢者の主な腰痛の原因として腰曲がりがあり、近年脊柱バランス不良を矯正する手術が広まってきていますが、こうした手術も侵襲や合併症の問題があり、高齢者の腰痛を根本的に解決する手段にはなりえていません。
そこで当研究グループでは、背筋や腹筋を中心とした体幹筋に着目しました。体幹筋は背骨を支える上で非常に重要な役割を果たしており、体幹筋量は体組成計を用いて簡便に測定することができます。体幹筋機能の低下は腰痛や腰椎機能の低下、脊柱バランス不良、更にはQOL低下につながることが予想されますが、これまでに体幹筋量と腰椎機能や脊柱バランスとの関連を調査した報告はなく、体幹筋量の臨床的意義は明らかになっていませんでした。
研究内容
当研究グループでは体幹筋量の臨床的意義を明らかにすべく、千葉大学、北里大学と共同で大規模な多施設研究を計画し、各施設の脊椎外来通院患者2,551例のデータを横断的に調査しました。
このうち、体内に金属を有する者、30歳未満の者を除いた1,738例(平均年齢70.2 ± 11.0歳、男性781例、女性957例)を対象とし、体幹筋量とODI※1、 腰痛VAS※2、 SVA※3、EQ5D※4との関連について多重非線形回帰分析を用いて評価しました。
解析の結果、体幹筋量は腰痛による生活障害度(ODI)と有意な関連を示し、体幹筋量が減少するにつれODIが悪化することが分かりました。同様に体幹筋量が少ないほど、腰痛(VAS)、脊柱後弯(SVA)、健康関連QOL(EQ5D)も悪化していました。この結果より、脊椎病態において体幹筋量が重要な因子であり、QOLとも関連していることが判明しました。大規模データを用いて簡便に測定可能な体幹筋量の臨床的意義を解明した研究は世界で初めてです。
※1 ODI (Oswestry Disability Index)…患者立脚型の腰痛疾患に対する疾患特異的評価法。腰痛が日常生活に与える影響を評価している。
※2 VAS (Visual Analog Scale) …痛みの程度を本人に直接表現してもらう方法。
※3 SVA (sagittal vertical axis)…第7頚椎から引いた垂線と仙骨後上縁との距離。腰曲がりによって第7頚椎垂線が前方にシフトしてくると腰背部の疲労により長時間の立位や歩行が困難となるといわれている。
※4 EQ5D (Euro QOL 5 dimension)…欧州で開発された、健康関連 QOLの尺度として幅広く用いられている調査表。
今後の展開について
本研究の結果、体幹筋量と腰痛、腰曲がりに関連があることが判明しましたが、体幹筋量が減少した結果、腰痛、腰曲がりが発生するのか、腰痛、腰曲がりの結果、体幹筋量が減少するのかはわかりません。今後は縦断研究を行い、これらの因果関係をつきとめたいと考えています。また、将来的には体幹筋量への介入を行うことによって、腰痛や腰曲がりの発生を予防し、健康寿命の延伸につながるような研究を行っていきたいと考えています。
掲載誌情報
【雑誌名】European Spine Journal
【論文名】ISSLS PRIZE IN CLINICAL SCIENCE 2019: clinical importance of trunk muscle mass for low back pain, spinal balance, and quality of life—a multicenter cross- sectional study.
【著者】Yusuke Hori, Masatoshi Hoshino, Kazuhide Inage, Masayuki Miyagi, Shinji Takahashi, Shoichiro Ohyama, Akinobu Suzuki, Tadao Tsujio, Hidetomi Terai, Sho Dohzono, Ryuichi Sasaoka, Hiromitsu Toyoda, Minori Kato, Akira Matsumura, Takashi Namikawa, Masahiko Seki, Kentaro Yamada, Hasibullah Habibi, Hamidullah Salimi, Masaomi Yamashita, Tomonori Yamauchi, Takeo Furuya, Sumihisa Orita, Satoshi Maki, Yasuhiro Shiga, Masahiro Inoue, Gen Inoue, Hisako Fujimaki, Kosuke Murata, Ayumu Kawakubo, Daijiro Kabata, Ayumi Shintani, Seiji Ohtori, Masahi Takaso, Hiroaki Nakamura
【掲載URL】https://link.springer.com/article/10.1007/s00586-019-05904-7